いっすん先は沼

声と顔がいい人たちがすき

神谷浩史が大好きだったオタクの話

 

20数年前に生まれてからずっと、キラキラしたもの(かっこいい、かわいい、きれい、つまるところ芸能や表現の世界の人)が好きだった。

 

人生の初恋はKinKi Kids堂本光一くんで、幼少期のお決まりの、「パパと結婚する」も生まれてから1度も言うことなく、「光ちゃんと結婚する!」と言い続けてきたほどである。

 

 

そんなキラキラした世界の住人が大好きだった私はいつしかアニメを追いかけるようになり、ある日友人から

「このラジオ声優さんがやってるんだけど、すごく面白いんだ!聞いてみて」と誘われ、まんまとそれに乗っかった。

 

毎週土曜日、当時学生だった私には夜更かしする背徳感と隣合わせの、ラジオから聞こえてくる

神谷浩史小野大輔の Dear Girl〜Stories〜」の声にワクワクした気持ちがあった。

 

しかしその熱もいつの間にか冷め、部活に勉強に恋愛に、果てには進学を機にラジオなんてものは全く触れる機会さえ失っていった。

 

 

それから何年か過ぎた頃、今度は別の友人から声がかかった。

「〇〇ってさぁ、DGS聞いてたよね?神谷浩史見に行かない?」

 

久しぶりに聞いたDGSというワードにまた、まんまと釣られた私は、その後の人生が激変するなんぞ思いもせず、ノコノコと2015年7月11日の幕張メッセイベントホールへと出向いていったのだった。

(ちなみにこの時はイベントよりも友人宅に泊まり、カラオケに行くのが大きな目的だった。もっと洒落こんでいけよ、ほんとにバカ。)

 

誘ってくれた友人からキンブレを1本借りて、不慣れな操作と苦闘してたはずが、いつの間にかまあ落ちた。見事に落ちた。

曲もキャラ設定も全く事前予習してないにもかかわらず、眉上バングの短パン小僧みたいな、小さくてもパワフルにステージ上を駆け回ってピョンピョンして、可愛くてかっこよくて、ダンスも歌もとにかく一生懸命、だけど楽しそうで、キラキラ輝いてる赤い人に落ちた。

そう、MOBのHIRO-Cである。

 

本当に記憶が無いまま沼にハマって、気づくと帰りには写りがいいからと、物販列に並びクリアファイルまで購入してた。

(今となってはパンフとキンブレも買っといて欲しかった、当時の私よ)

 

 

そこからの私の行動力は凄まじかった。

落ちる前の私は、神谷浩史を知らなかったわけではないけど、なんとなく、どこか自分とは無縁の世界だと思って、ぼんやりとフィルター越しに彼を見ていた。

 

まずHIRO-Cと神谷浩史についてものすごく調べまくった。

CDや曲を買い集め、神谷浩史1stソロライブのチケットを両日譲ってもらい、Kiramuneのファンクラブにも入り、過去のアニメを漁り、ライブがあれば出来るだけ入りたい、まさにオタクの戦闘状態だった。

 

そして1年後、DGS10周年のイベントが開催されるときた。

沼に落ちてから待ちに待ったDGSのイベント。

参加するほかなかった。

ジリジリ焦げるような暑さの中、フードの屋台に並び、展示品を見て、ライブ本編2日目には夏だから、という理由で浴衣まで着ていった。

 

このころにはもうオタクのイベント、ライブは2日間あれば両日参加が当たり前という暗黙の了解が私と友人の中で成立していた。

 

ただ、DGS EXPOに関してはチケ運がなかった。

まさかの初日重複。

なんとか2日目の交換先を見つけたが、譲ってもらった席は200レベルの10列目ほどの、しかもステージから下手よりのほぼほぼ正面。

良席、とは言い難い席だった。

 

しかし、奇跡が起きた。

アリーナトロッコでちょうど目線の先を、等身大の神谷浩史が通った。

通り過ぎてしまいそうなその瞬間───目が、あった。

そう、目が合ったのだ。1年も焦がれた神谷浩史と。

 

単純な私はますます沼に落ちていった。

なにあれ顔小さいお目目クリクリでかわいい細い!なによりこっち見た!

一緒に参戦した友人に抱きついて号泣してたのを思い出す。

 

もうめちゃくちゃ好きになっていた。

恋は盲目と言うほどに。

 

 

 

そんな私に、稲妻が落ちたような、例え難い衝撃が落ちた。

 

「人気声優神谷浩史!結婚していた!!」

週刊誌に写真付きで子供を抱き上げる、神谷浩史がすっぱ抜かれていた。

 

今思い出しただけでも、この文字を打つだけでも今でも手が震える。

忘れもしない2016年7月10日の事だった。

単純でバカな私は、「神谷さんのファンになって明日で1年になるな〜!」と呑気なことを考えながら出勤してたから、もう絶対に忘れられない。

 

頭は真っ白、真夏だというのにサァーっと血の気が引いて寒気がした。

上も下も区別がつかなくて、よく無事に出勤できたな、と思うほどだった。

よく分からないけど、あー終わった、と思った。

 

そこから私は混乱したままだった。

ずっと、ずーーーっと。きっと一昨日まで。

何を見ても、モヤモヤした気持ちがよぎった。

 

 

大好きだったDGSが聞けなくなって、キラキラしたものが大好きな私には特別な世界のKiramuneも、本腰を入れられなくなった。

キラフェス2017に関しては物凄い奇跡で神席が回ってきた、残酷なことに。

もちろん参戦し初披露のイズリズには腰を抜かしたが、どこか心の中で本気で推せなかった。

 

そして私は1年、キラフェス神席を機にイベントをお休みすることにした。

(実を言うと最初は神谷浩史のオタクを卒業するつもりでいた。神席を自名義で取れたし、何より笑顔でお手振りする神谷浩史を至近距離で見ることができたから、それで満足。いい思い出を持って卒業しようと考えていた。)

 

しかし友人がKiramuneにどハマリしてしまったのは想定外だった。

私は卒業する覚悟でいたはずなのに、あれよあれよとリーライに来てしまっていた。

本来なら1番生で見たかった舞台。

2016年のライブビューイングを見て以来ずっと楽しみにしていた。

パンプキンファームの宇宙人での、ゴウガイ役が目に耳に、焼き付いたまま離れない。

「目の前が虹色に見える」

たった、一言で会場を狂気に陥れ、空気さえも一変させてしまった彼の本気をまた見たいと思った。

普段は見れない、俳優神谷浩史が見れる唯一の機会。

彼が企画から練った物語は素晴らしい、しか言い表せなかった。

ああ、演技に関しては本物だ、と。

私が好きなままの呼吸遣い、間のとり方、発音、ニュアンス、どれをとっても変わらなかった。

変わったのは痛いほどに、私の見方だけだった。

苦しかった。

最高のステージなのに純粋に楽しめなかった自分が。

 

卒業するつもりだったのに、キラフェス2018も実は参戦した。

アーティスト入野自由がどうしても人生の中で生で見ておきたかった。

(自名義はお互い全滅したからお譲り先を探してくれた友人には本当に感謝しかなかった。)

入野自由まじかっこいい。控えめに言って最高だった……。

そして、進化したイズリズを見せてくれる神谷浩史には本当に頭が上がらなかった。

どこまでもパフォーマンスに妥協はしない、そんなところが好きだった。

それでもやっぱりどこか、私の中で煮え切らない何かがずーーっとつっかえたままだった。

 

 

そして一昨日。2018年4月21日22日。

DGS vs MOB LIVE SURVIVEに参戦してきた。

 

ちなみに私は声豚とジャニヲタのハイブリッド人間で、ちょうどこの公演の1週間前にジャニ最推しのSexyZoneの現場に入っていたから、そっちの余韻に浸りつつ、そんなに予習もせず、東京観光も兼ねて物凄い軽い気持ちで行った。

 

結果、また落ちた。

つまるところ、全ての原点だったHIRO-Cを見せられてまた落ちないはずなんてなかったし、なにより。

念願の神谷浩史からの指差しファンサを貰ってしまったのだ。

それはもう、時間が止まった。私の心臓も止まりかけた。

まさか、私に?でも5秒くらい目が合っている。

自惚れかもしれないが、そう思いたい。どうか、思わせてほしい。

 

新旧の曲をおりまぜつつ、客を飽きさせない構成は本当に見応えがあった。

そして、ライブ本編ラストの曲、「トケイとテガミ」の前に、プチMCがあった。

私はきっとこの瞬間も忘れられないんだろうと思う。

神谷浩史の紡ぐ言葉が、グサグサ痛いほどに胸に刺さって、涙が溢れてきた。

 

「思い出は素晴らしいもので、それは美しく美化されるもの」

「でも僕達はそれを裏切ります。」

「だって、生きてる人間だから。」

「思い出の中で人は生きられないんです。」

そんなニュアンスのことを話してくれた。

 

 

私は、ハッとした。

ずっと思い出の中で生きていたのだ。

ずっと思い出の中で生きていたいと願っていた。

 

あんなに大好きだった現場に行くことが出来なくなったのは、きっと、目が合った、という幸せな一瞬が辛く悲しい思い出に上書きされてしまうのが怖かったから。

 

でももう、アルバムは閉じなければ。

今を、これからを生きなくては。

そう気付かせてくれたのだ、素敵な思い出が残る、ここ、たまアリで。

また新しく、幸せな思い出で上書きされながら。

大好きだった神谷浩史が、時計の針を進めてくれた気がした。

 

 

これからも、たまには違う世界を覗き見して、フラフラして、また憧れて、また違う世界を覗き見して、と繰り返していくけど、

きっと私の根っこは、原点はここなんだろうなぁ、と。

そんな風に思わせてくれた最高のライブだった。

 

 

幸せな思い出が辛く悲しいものに上書きされるのが怖いなら、セーブデータを増やせばいい。名前をつけて保存すればいい。

こうやって1つ、また1つ乗り越えていけたらいい。

 

そして、いつか、いつの日にか

心の底から言える日が来るだろうか。

 

 

 

 

 

結婚おめでとう